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~妊娠・出産期から同一の妻・夫に対して、4年間に渡る経年調査を実施~ 妻・夫とも、「妊娠・出産・0歳児期」の子どもに関わる意識と行動が、 それ以後の「子育ての自信」に影響を及ぼす

株式会社ベネッセコーポレーションの社内シンクタンク「ベネッセ次世代育成研究所」では、初めて子どもを持つ夫婦が、妊娠・出産・子育て時期をどのように乗り越えていくのかを調査するため、2006年11月に「第1回 妊娠出産子育て基本調査」を開始した。まず「妊娠後期の妻・夫」に調査を行い、その後、毎年、同じ対象への調査を継続し、生活や意識がどのように変化したのかを分析して来た。今回その調査から、「子が2歳時期となった妻・夫(288組)」への4回目調査を終えての1回目~4回目の総合的な分析結果が発表された。

調査では、妊娠・出産時の意識・経験が、その後の妻・夫の子育て意識・行動や、夫婦間の愛情にどのような影響をもたらすか、また、妻・夫それぞれの出産・子育てに関する相談先、夫の労働時間と子どもとの接触等について、明らかにしている。主な調査結果は、以下の通り。

①リラックスできた出産経験がある妻は、0~1歳児期に子育てに自信を持てる割合が高くなる。

②妻の妊娠期に、育児書を読むなど子育て情報を集めた夫は、子どもが0歳児期に一緒に遊ぶ割合が高い。また、0歳児期に育児をする夫は1~2歳児期も続け、子育ての自信も高い傾向がある。

③妊娠期~2歳児期にかけて、妻の夫に対する「一緒にいると本当に愛していると実感する」「私の仕事、家事、子育てをよくねぎらってくれる」評価は全般的に減少し、減り幅がもっとも大きいのは妊娠期~0歳児期である。一方、夫の妻に対する同様の評価では、減少幅は相対的に小さい。

④妻は妊娠・出産、子育てに関する相談先として、身近な人や専門家など多くの相談先持ち、1年ごとにその相手が変化する。一方、夫は妻以外の子育てに関する相談先が少ない。

⑤0~2歳児期を通して、夫の1日の実働時間が11時間以上を越える割合は3割を超える。1日の平均実働時間が増えるほど、子育てへのかかわりが減少し、子育ての自信が低い傾向が見られる。

妻と夫それぞれに、妊娠・出産・初期の子育て時期の意識・行動の違いが、その後の子育て意識・行動の違いとなって現れてくることが判明。妻が妊娠・出産時期をリラックスして過ごせる環境をいかに作るか、また、夫に視点を当てると、主体的に育児準備できる環境を作ることや子どもが0歳の段階でいかに子育てに関わるかが重要になるようだ。

一方、妊娠期から2歳児期にかけて、妻の夫への愛情の減少幅が、夫の妻への愛情の減少幅を大きく上回ることは、特記すべきこと。また、妻は子どもの成長に応じて子育ての相談先が広がるが、夫は仕事で多忙な中、主な相談相手は妻のみであるということも課題の一つといえる。

今回の調査から、はじめての子どもを持つ親が親としてスムーズに発達し、子どもにとって良質な環境が育まれるには、家族が新たな段階を築き始める妊娠・出産・0歳期が大切なことがわかった。地域や企業など家族を取り巻く社会において、子育てのしやすい働き方・環境を整えていくことが、求められている。

■「妊娠出産子育て基本調査・フォローアップ調査」調査概要
【目的】
Ⅰ.妊娠・出産・子育ての移行期において、どのような体験が、妻・夫の子育てへの自信に影響するのかを把握する。
Ⅱ.妊娠・出産・子育てを通して、実態や夫婦の意識の変化を把握する。
Ⅲ.Ⅰ、Ⅱの結果をもとに、子どもを産み、乳児(0歳児)を育てている夫婦にはどのようなサポート(出産時のスタッフや家族のサポートのあり方、父親のワークライフバランス等)が必要なのかを探る。
【時期】
フォローアップ調査
第1回:2006年11月・2007年6月 第2回:2007年11月・2008年6月
第3回:2008年11月・2009年6月 第4回:2009年11月・2010年6月
【対象】
妊娠期から2歳までの継続調査に同意した夫婦288組
【対象エリア】
全国
【調査方法】
郵送法(一部 面接調査を実施)
【調査・検討委員会メンバー】
小林登(ベネッセ次世代育成研究所所長・東京大学名誉教授・国立小児病院名誉院長)
大日向雅美(恵泉女学園大学大学院教授)
榊原洋一(お茶の水女子大学大学院教授)
菅原ますみ(お茶の水女子大学大学院教授)
丸光恵(東京医科歯科大学准教授)
後藤憲子(ベネッセ次世代育成研究所主任研究員)
【ワーキンググループ】
菅原ますみ(お茶の水女子大学大学院教授)
酒井厚(山梨大学准教授)
松本聡子(お茶の水女子大学リサーチフェロー)
梅﨑高行(甲南女子大学准教授)
高岡純子(ベネッセ次世代育成研究所主任研究員)
田村徳子(ベネッセ次世代育成研究所研究員)

■ベネッセ次世代育成研究所
 日本では少子高齢化、核家族化、女性の社会進出等、社会環境の変化が加速し、家族のあり方や親子関係を含めた子どもの成育環境に大きな変化が起こっている。このような中、ベネッセ次世代育成研究所は、個人や家族の生活視点を大切にしながら、子どもや家族が「よく生きる」ための調査研究を行っている。
【URL】
http://www.benesse.co.jp/jisedaiken/

■調査詳細
①リラックスできた出産経験がある妻は、0~1歳児期に子育てに自信を持てる割合が高くなる。
 0歳児期にお産全体を振り返って、お産でリラックスすることができたと答えた妻はリラックスできなかったと答えた妻に比べて、0歳児期と1歳児期の子育てに自信が持てるようになった割合が高かった。

②妻の妊娠期に、育児書を読むなど子育て情報を集めた夫は、子どもが0歳児期に一緒に遊ぶ割合が高い。また、0歳児期に育児をする夫は1~2歳児期も続け、子育ての自信も高い傾向がある。
 妻の妊娠期に育児書を読むなど子育て情報を集めていた夫のほうが、子どもが0歳のとき、子どもと遊ぶ頻度が高かった。おむつ替えやトイレ、寝かしつけでも同様の傾向がみられた。
 また、子どもが0歳のときにおむつ替えやトイレの面倒をみる頻度が高い父親群と低い父親群に分け、群ごとに0~2歳児期での頻度をみた。その結果、0歳児期に高い父親群は1、2歳児期で行う割合も子育ての自信も高い一方、0歳児期に低い父親群は子どもの年齢が上がるにつれて、少しずつ育児をする頻度が高くなるスロースタートの様子がうかがえた。

③妊娠期~2歳児期にかけて、妻の夫に対する「一緒にいると本当に愛していると実感する」「私の仕事、家事、子育てをよくねぎらってくれる」評価は全般的に減少し、減り幅がもっとも大きいのは妊娠期~0歳児期である。一方、夫の妻に対する同様の評価では、減少幅は相対的に小さい。

④妻は妊娠・出産、子育てに関する相談先として、身近な人や専門家など多くの相談先持ち、1年ごとにその相手が変化する。一方、夫は妻以外の子育てに関する相談先が少ない。
 妻の場合、妊娠期~2歳児期を通して、配偶者、親、友人・知人に相談する頻度が高く、加えて専門性のあるサポートとして、妊娠期は医師、看護師・助産師、0歳児期は保健師、市区町村や民間の子育てサービス窓口の人、2歳児期は保育士・幼稚園教諭への相談が多い。一方、夫が相談するのは圧倒的に妻で、子どもの年齢が上がるにつれて、相談する頻度が減る。

⑤0~2歳児期を通して、夫の1日の実働時間が11時間以上を越える割合は3割を超える。1日の平均実働時間が増えるほど、子育てへのかかわりが減少し、子育ての自信が低い傾向が見られる。
 1日の実働時間が「8時間台以下」が妊娠期には21.6%だったが、2歳児期には26.8%だった。一方、10時間以上は妊娠期~2歳児期を通して半数を超え、「11時間以上」は3割を超えていた。「仕事が忙しすぎるので、子どもと過ごす時間が少ないと感じている」のは、実働時間が8時間台では15.6%だが、11時間以上では64.9%だった。

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