特集 タグ: , ,

不活化ポリオワクチン導入でどう変わる?

2012年9月からポリオ(小児麻痺)の予防接種が、生ワクチンから不活化ワクチンの接種に変わります。これに伴い、接種のスケジュール等もこれまでと変わるので注意が必要です。

そもそもポリオってどんな病気?

ポリオは、ポリオウイルスが人の口の中に入って、腸の中で増えることで感染し、手や足に麻痺があらわれたり、その麻痺が一生残ってしまうこともある病気です。(感染しても麻痺などの症状が出ない場合も多い。)また、便などを介して他の人にも感染し、乳幼児がかかることが多いそうです。

日本では、1960(昭和35)年に、ポリオ患者が5千人を超えていましたが、生ワクチン(生きた細菌やウイルスの毒素を弱めたもの。これを接種することによってその病気にかかった場合と同じように抵抗力(免疫)ができる。)の定期接種導入により、患者は減少。1980(昭和55)年の1例を最後に、現在まで野生(ワクチンによらない)ポリオウイルスによる新たな患者は出ていません。

しかし、海外では、依然としてポリオが流行している地域があり、海外で感染したことに気が付かないまま帰国(入国)して、感染を広めてしまう可能性があります。そこで、ワクチンの接種が必要となるのです。

生ワクチンと不活化ワクチンの違いは?

これまで日本で接種されてきた「生ワクチン」は、生きたポリオウイルスの毒素を弱めてつくったもので、これを接種することによってポリオに感染した場合と同じように抵抗力(免疫)ができます。しかし、まれにポリオにかかった時と同じ症状が出てしまうことがあり、問題になっていました。

一方、導入が決まった「不活化ワクチン」は、ポリオウイルスを不活化(殺し)、免疫をつくるのに必要な成分だけを取り出して病原性をなくしてつくったもので、ウイルスとしての働きはないので、ポリオと同様の症状が出ることはなく、より安全な予防接種となります。

生ワクチンと不活化ワクチンをめぐる騒動

生ワクチンの定期接種によって、野生ポリオは消滅した日本。しかし、生ワクチンの接種でポリオを発症する被害は後を絶たず、不活化ワクチン導入を望む声が急増。海外では不活化ワクチンの接種が普及していることもあり、医療機関が独自輸入した不活化ワクチンを接種する動きが広がりました。

しかし、この輸入不活化ワクチンは国の承認を得ていないため、接種費用は保護者負担、さらに、健康被害が生じても補償が受けられないなどの問題もありました。

日本でも、2002年から不活化ポリオワクチンを含む四種混合ワクチンや単独不活化ポリオワクチンの開発を進める会社が出始め、国も導入を検討しましたが、なかなか導入決定には至らず。生ワクチンの接種でポリオが発症することを恐れ、不活化ワクチン導入までポリオの予防接種を控える保護者も増加したようです。

そんな中、2011年には神奈川県が国の導入前に不活化ワクチンを独自輸入し、希望する県民に接種をはじめ話題となりました。そして、厚生労働省は、2012年4月、ついに不活化ワクチンを同年秋から導入する考えを示し、ワクチンメーカー、サノフィパスツール社が申請していた単独不活化ポリオワクチンを承認。9月1日から定期接種で導入することを決定。11月からジフテリア・百日せき・破傷風・不活化ポリオワクチン(DPT-IPV)の4種混合ワクチンが導入される予定となっています。

不活化ポリオワクチン導入で接種スケジュール、回数、方法などはどう変わる?

生ワクチンは、注射での接種ではなく口から飲む形の接種を合計2回行っていました。しかし、不活化ポリオワクチンは、初回接種3回(生後3ヶ月から12ヶ月に20日以上の間隔をおいて3回)、追加接種1回(初回接種から12ヶ月~18ヵ月後に1回)の合計4回の注射による接種が必要になります。

また、生ワクチンは多くの自治体で春と秋に集団接種を実施していましたが、不活化ワクチン導入後の9月以降は、集団接種ではなく、医療機関での個別接種となり、通年接種可能になる予定です。

想定される主な接種対象者と回数は以下の通りとなっています。

・1回もポリオワクチンを接種していない方は、4回接種

・不活化ワクチン導入前に生ワクチンを1回接種していた方は、9月1日以降に、不活化ポリオワクチンを3回接種

・すでに不活化ワクチン1~2回と生ワクチン1回を接種している方は、合計4回となるよう、残りの不活化ワクチンを1~2回接種

・すでに不活化ワクチンを4回接種している方は、接種不要

なお、全体を通して4回目となる単独不活化ワクチンの追加接種は、定期接種には含まれず、今後、追加接種に関する試験データが整うまでは、接種費用が自己負担となります。

また、2012年8月以降に生まれる子は、3種混合ワクチンの予防接種ではなく、ジフテリア・百日せき・破傷風・不活化ポリオワクチン(DPT-IPV)の4種混合ワクチンの定期接種が予定されています。

【参考サイト】
ポリオとポリオワクチンの基礎知識(厚生労働省HP)
ポリオワクチン(厚生労働省HP)
不活化ポリオワクチン導入へ 接種の注意点は(東京新聞web)

カテゴリー: 特集   タグ: , ,   この投稿のパーマリンク

コメントをどうぞ